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商品詳細

澁谷征司『BIRTH』サイン入り

販売価格: 5,000円 (税別)
震えを生む場所から 子供の頃、澁谷征司は出張から帰った父親の土産話を聞き、 その街の景色を思い描くのが好きだったという。
空想によって生み出された遠い街のイメージ。
実際の景色や場所から切り離された記憶の中の風景は、実は多くの人々の間で共有された、 無駄な書き込みのないイメージでもある。
写真機を構えてからの澁谷の10年間は、 そんなシンプルなイメージの断片を己の写真の中に見出す作業として費やされてきた。
その行為を“写真の写真らしい特性を確認する作業”と言えばそれまでだが、 自己探求でもなく、確実な客体を据えるでもないまま、心の震えだけを頼りに 現実の風景とプリントの中の風景の間を行き来するのは、決して楽な作業ではなかったはずだ。
皆が遠い昔に聴いたシンプルなメロディを紡ぐために、 彼はカメラを覗きながら、幾億もある鍵盤を ひとつひとつ押えてみなければならなかったのだから。
しかしなぜ、そんな困難な作業を絵筆でも楽器でもなく、 カメラという不便な道具を用いて行わなければならなかったのか?
目の前の風景を複写することしかできない写真。
撮る場所は無限に存在するし、シャッターを切る度に それは澁谷自身の新しい記憶の書き込みをまとっていくだろう……
「写真を自己表現として機能させてはいけないということは早い段階から気付いていたんです。
そのために僕が何を背負って撮影に向かうかといえば、それは自己の世界ではなく、社会だというしかない。
それだけに、自分自身が写真に追いついていないと感じることも多かったのですが」 澁谷が敢えて写真を選び、 作家として10年もの間沈黙せざるを得なかった理由は、 恐らくこの言葉に凝縮されているのだと思う。
彼が写真機を構えるのは、他でもないカメラアイを利用し、 個人ではなく社会として記憶と向かい合うため。
そして何より、複雑に絡み合った記憶の糸を紐解く震えを、 現実と地続きの感覚として、 澁谷自身を含む皆が体感できるものにするためなのだ。
改めて写真集を眺めてみる。
波打ち際より向こう側に誘われて、水に導かれながら野を巡り、 森を巡った我々は、最後に出会う傷ついた老人が奏でる音楽で こちら側へと戻される。
帰る場所はいつも、現実の“いま”という地点でしかない。
記憶に溺れることは許されず、 我々はこの先もただ“いま”から先に向かって歩まなければならないのだ。
だが、その事実がこれほどまでにシンプルに示された時、 歩み続けることの恐怖は自然と薄れていくだろう。
何も怖がることはない。 澁谷の写真はそこにあり、いつでも“いま”までの自分の歩みを、 震えと共にトレースしてくれるのだから。
もちろん出来すぎたストーリーではある。
しかし、10年の沈黙を破って語り出した写真たちが このような形で編まれたのなら、 そんな美しい物語を信じてみてもよいと思わないか。
文=編集部 Text by Studio Vocie
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